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ラピスラズリブルー

続・父の詫び状

向田邦子のデビュー作 父の詫び状が好評で 続編として出版したのが 「眠る盃」 その次が 「夜中の薔薇」
何れも 巡る盃 野中の薔薇 を覚え間違えたエピソードから題名を選んでいます

続・父の詫び状_d0338347_20150127.jpg
夜中の薔薇は 向田邦子の生前に企画され 没後直後に出版された このことを知ると何とも胸の詰まる本であります

向田節は 最初の出だし 最後の締めくくりの絶妙さを結びつける軽快な筆運び 全く時代を感じさせない見事な文章です
遥か昔の記憶を 実に緻密に鮮明に浮かび上がらせます 殆ど資料無しに書いているように感じられ 彼女の恐ろしい記憶力に驚嘆させられます
眠る盃の文中に彼女の母親が物覚えの良い人で「昭和初期の納豆売りの服装から竹輪の値段まで(克明に覚えている)」という文章があり
抜群の記憶力の一部は母親だったことがわかります
「締め切りが迫ると一時間四百字詰め原稿用紙10枚で書き飛ばす」ともありますので 書き始めるとそのスピードたるや恐ろしい早さだったと推測されます 余り辞書も引かず 関係文書も読まず 自分の記憶力と思い込みで一気に書き飛ばしていく様はまさに鬼気迫るものがあったことでしょう
「少しでも他人さまに良く思われたい一心で時々話を面白くしてしゃべる癖がある」との自白はプロデューサーの久世さんが「同じ話を何度も繰り返し語り そのたびにどんどん話が変わっていって面白くなる」と評していますが ビアトリクス・ポターの如く 向田さんはストーリーテラーの資質にあふれていたのでしょう
私はこんな筆巧者は山口瞳以外思い当たりません

眠る盃の中に 人物評論が出てきますが 此れは余り筆が踊っていません 昔リクルートの編集者に勤務先の事業内容を書かせたときのような虚ろさを感じてしまいました
50代60代と年を重ねていった向田さんだったらこんな文章は書かないだろうな と思いを巡らせるのも愉しいひと時です


by toshi-ohyama | 2017-09-09 06:40 | 幕張図書館 | Comments(0)
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