角田房子氏の著作を読み耽っています
三冊目は甘粕正彦大尉伝です
甘粕は「自由 平等 博愛などと云う言葉を日本から駆逐しなければならぬ」と繰り返し語ったと云います
「我が国に於いては 国家が主であって個人は従である 個人あっての国家ではない 国家あっての個人だ」とも
陸軍幼年学校 陸軍士官学校と 純粋培養された軍人の典型であり 精神教育の恐ろしさ 洗脳の威力を感じざるを得ません
方向が違えば歴史に残る違う仕事をしたのではないかと思います
著者は 大杉栄虐殺事件の真相に迫るべく力の限り調査をされたようですが 甘粕正彦が大杉夫婦殺害の真犯人であった確証は得られませんでした
そして 54歳の生涯の間 この事件を引き摺って生きたことも間違いありません
角田房子がこの本を書いたのは昭和50年 甘粕事件から僅か50年後のことです
今の私自身に置き換えてみれば 昭和45年の三島由紀夫事件にあたります
著者は 当時生存されていた事件の関係者に直接話を聞き 甘粕の人間像に迫っています
この本には 石原莞爾も登場します
「満蒙問題の解決は 日本の活くる唯一の途なり」と満州事変に突き進みます 戦略家としての石原が評価されることが果たして良いことなのか
その後の日本が 破滅への無謀な道を突き進む中で 石原は戦争の拡大に反対する立場に立ちますが時代の流れに逆らうことは出来ませんでした
石原は佐官としては評価されるが将官の器ではないとの声もあります
その時々に起きている事件に如何に対応するのか 歴史に学ぶ重要さを実感させてくれる名著です