「いのちなりけり」は 葉室麟の直木賞落選作です
以下は この物語の中に出てくる台詞
人は生きて何ほどのことが出来るか 僅かなことしか出来はしない山に苗を一本植え 田の一枚も作るぐらいのことかもしれない しかしその僅かなことをしっかりとやることが 大事なのです人は何故死に 次々に生まれてくるのか一人が僅かなことをやり遂げ 更に次の一人がそれを積み重ねていくこうして 人は山をも動かしていく 人は己の天命に従う限り 永遠に生きるのですそう思えば死は恐れるに足らず 生もまた然りです
やがて 葉隠れに繋がる詞 葉室麟の凄さを感じました
元々はお得意の九州鍋島藩の御家騒動に始まり 徳川綱吉 水戸光圀 古今伝授 将又 吉良上野まで登場し 物語の展開が錯綜するややこしい作品です作品の評価は 敢えて避けたいと思います巻末の解説で 縄田一男さんは五味康祐が生きていたら「俺は百年の知己を得た」と云うであろうと結んでいます最早 五味に親しむ読者は余りいないのかもしれません ふと 五味も読み直してみるかと思ったりしました 葉室は この作品で初めて直木賞候補となり その後5度目にして蜩ノ記で直木賞を漸く受賞します 長き戦いの日々の記念碑ともなる作品です