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ラピスラズリブルー

女信長

NHKの「歴史秘話ヒストリア」に出演した佐藤賢一という作家を初めて知りました
山形県鶴岡出身で 私より二回り若い第121回直木賞作家ですが 名前さえ知りませんでした
主として フランスを題材にしての歴史小説が多い中 女信長という作品があると知りました
女信長_d0338347_13074344.jpg
独特の書体で いつの間にか 登場人物の独白が括弧なしで続き最後の方に 括弧をつけて独白が終わります
天海祐希で一度TVドラマ化されたようですが 題名から判る通り 信長は女性だったとする奇抜な発想で物語が展開します

織田信秀には 信長と腹違いの兄 信広が居ますが 御長(おちょう)という妹を男として育て 信長とします
信長が男であることを知っていたのは 信秀 帰蝶 浅井長政 明智光秀 等々 秀忠以下 信長の息子たちは 信長が謀殺した弟信行の子供達という設定です

歴史小説は 史実と著者の考えた虚構を如何に歴史上の事実と思わせるかが腕の見せ所 司馬遼太郎など その妙術にに長じていたと感じます
私も 書かれたことが全て史実と思い込み歴史を捉えていましたが 社会人になり自分が見聞きしたことが全て真実と「相手の虚言」が見抜けぬ思考過程をいつの間にか
育てられてしまった感があります

信長が 女性であるとの虚構から始めれば 作家の小説構築は自由自在に膨らみます その意味で この小説は空前絶後に面白いです

信長は 「天下一統」を自らに与えられた天命と理解し 天下布武に乗り出します
宣教師から学んだ西欧の戦術を取り入れ 既存の権威を次々と破壊し新しい世の構築に励みます

既存の権威を叩き潰し 自らの天下一統により安寧の世を作り出そうとする 後の儒教思想から 下克上を否定し「庶民の平安のため」天下統一を目指すというような
虚説を否定している処に 大きな共感を得ます

信長は 最終的に朝廷・天皇という既存権威をどうしようとしていたか 私は自分の権威の下に皇室を置こうとしていたことは間違いないと考えます
京都に新造した二条御所に皇太子誠仁(さねひと)親王を迎え 其の皇子五之宮を織田信長の猶子とする
次に今上から譲位させ 誠仁親王を帝位に上らせる 更に誠仁を退位させ 二条御所から安土城清涼殿に移し捕囚とする 五之宮に帝位を継がせれば信長は 帝の父親であり  太上天皇 もしくは上皇としての地位で 院政を敷くことが出来る
このシナリオの下に 安土城天主閣の下に 清涼殿を模した館を築いたことは間違いないと確信します

佐藤賢一が 日本史に題材を求めた小説が 幾つかあるようですが 文庫本はこの一冊のみ 新刊文庫は入手困難かもしれません 中古でも是非一読をお勧めします



 



by toshi-ohyama | 2019-11-06 04:07 | 幕張図書館 | Comments(0)
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