高橋克彦の 陸奥四部作 三作目 炎立つ 全五巻

風の陣 伊治の呰麻呂に始まり 火焔 阿弖流為 そして 炎立つは 安倍貞任と陸奥の英雄たちが無念の死を繰り返します
飛鳥時代以来 陸奥は一度として自分達から戦を仕掛けたことはありません 蝦夷には価値のない「金」が無尽蔵に近い形で産出され 朝廷・東国源氏は 自らの昇進の為に 陸奥に雪崩れ込みます 律令制が崩れ 朝廷や公家達の収入は先細りとなり 陸奥の金に食指を伸ばしていく
蝦夷達が穏やかな生活を求めて 朝廷/源氏の攻勢に立ち向かい敗れ去っていく
頼朝の権力への執念は 奥州藤原氏の撲滅のため義経追討という言掛かりで殲滅にかかる
著者は 蝦夷の民の安寧な生活を守るためと書きますが 朝廷も蝦夷も覇権争いに終始したのではとの疑念が拭えません
蝦夷側から書かれた歴史小説としての視点を与えてくれる名著です 次は「天を衝く」が四部作の最終章となりますが 少し休息が必要です