恩人 逝く

語り尽くせぬ恩義ある先輩が　逝去されました

鹿渡欣司　令和二年6月7日　享年75歳　一年の闘病生活を経て肺癌の為永眠されました　心よりお悔やみ申し上げます

修道高校　広島大学卒　広島弁丸出し　大のカープファン　テニスの腕は社内でもトップクラス　実業団でも活躍されました

営業に転身していた私を　人事部へ呼び戻してくれた方でもあります

仕事の鬼と評するのが一番彼には相応しいかもしれません

昭和60年4月1日より彼の下で社員採用を担当することになりますが　丁度最初の子供が生まれる直前　彼に呼ばれ「4月12日が土曜日なので　この日に出産させろ

日曜日に役所に届けて　月曜日から出社しろ」「妻の出産休暇は2日あると思いますが」「土日2日で充分だ」．．．幸い計画分娩で無事４月１２日に長女が誕生しました

風邪を引いたくらいでは休みを取ることなど出来なかった時代です

「妻が風邪をひきまして．．．」「それがどうした　お前が引いたわけじゃあるまい」　これで終わり．．．

誰もが24時間企業戦士だった時代です

そんな硬骨漢の鹿渡さんが　昭和50年秋　突然有給休暇を請求します　

何かあったのですか？と聞くと　広島カープが初優勝　ちょうちん行列に参加するので故郷広島に帰るというのです

「カープの優勝は　私事に過ぎませんよ　仕事を放りだすのですか？」と揶揄うと

「大山よ　お前の好きな巨人軍は　何時でも優勝できるだろうが　広島カープの優勝は　俺の人生で最初で最後になるかもしれん　広島県人として心此処にあらずじゃけん　判ってくれ　頼む」　　今でも　思い出すたびに　泣けてくるような実話です

湯豆腐に日本酒が大好きで　御銚子五本目を過ぎると呂律が回らなくなり記憶が飛んでしまう愉しい酒を何度ご一緒したか

「大きい仕事をしたいな　その為には偉く成らにゃいけんぞ　上のポストを目指すのは目的ではなく　手段じゃけん．．．」

広島弁は　叱られているような威圧感がありますが　何時も心の熱い　暖かい人でありました

採用人としての私は　彼の技を盗んで育ちました　　　　

想い出は尽きません　ご冥福をお祈り申し上げます