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ラピスラズリブルー

一外交官の見た明治維新

半藤一利の「それからの海舟」を読む中に英国人アーネスト・サトウが登場します
丁度 講談社学術文庫から「一外交官の見た明治維新」が 発刊されました
以前から読みたかった本でしたが 長く絶版となっていて入手出来ませんでした
嬉しい再刊ですが 細かい活字で600頁の読破は 一苦労でした しかも文庫本では異例の\2,200でした
一外交官の見た明治維新_d0338347_10141058.jpg
Ernest Mason Satow は著者の本名 Satow は元々の英国のlast name だそうです
サトウの日本に関する知識は 驚くほど深く 当時の漢文で書かれた文書も難なく読みこなしています 日本の習俗に対する知識も深く 兵庫 大阪 京都 新潟 東京と 日本全国を廻っています
ご本人は 一外交官と名乗っていますが 彼は通訳官なので 正確には外交官とは云えないのではないかと思います

訳者は 此の本について 公文書が公開されていない時期にあっては 貴重な資料であるが サトウが得た情報 彼の見聞を基礎にしているので歴史資料としては問題があることも指摘しています
例えば サトウは幕末の西欧諸国の位置付けを 幕府を支援する仏蘭西ロッシュ公使と薩長側を支援する英国パークス公使という構図で描いていますが 当時の西欧諸国は 中国に対しては領土的野心と自由貿易を掲げ 軍事的な行動に出ますが アヘン戦争の経験もあり 産業革命後の英国にとって重要なのは 領土獲得ではなく「自由貿易」であり紛争を引き起こし戦争に巻き込まれるほどの 予算的にも大きな経費を極東に注ぐような東アジアに対する政治的関心はなかった
従って駐日公使に与えられる権限(人員 予算 物資)も大きなものではなかった

サトウは 仏蘭西が幕府を支援し 英国が薩長側を支援する構図を描いているが 歴史的には必ずしも真実を伝えているとは言えないと 訳者は後書きで述べています
英国公使ハリー・パークスは ロッシュ仏蘭西公使が幕府との間で諸外国との取り引きを独占しようとしているのではないかとの鵜方意を強く持っていたことは間違いないが 日本の政権を握っているのは依然幕府であり 最大の勢力が幕府であることを疑って居はいないし 極力中立的立場に徹し 薩長側に支援を行ってはいない
サトウは 幕府を軍事力で倒すべきとの意見表明を何度も行ってはいます

此の本が サトウ個人の位置付けを高めるため サトウの見聞きしたことをサトウの視点から書き綴った本であることを強く認識して 極めて俯瞰的に批判的に読まねばならないことを強く意識したため 大きな疲労感が残りました
 



by toshi-ohyama | 2021-05-06 05:56 | 幕張図書館 | Comments(0)
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