決定版 大東亜戦争（上）

先輩の紹介で読み始めました

上巻を読み終えたところで　一度内容を振り返ってみます

開戦から８０年　戦争体験者は殆どの方が鬼籍に入られ　戦争の研究は　新しい資料の発掘等に頼る分　困難が増しているように感じます

今回この本で　波多野澄雄氏の論文に引き付けられました　波多野氏は防衛大学校を中退し慶應義塾大学で法学部・同大学院で学ばれた方で私とは１年違いの１９４７年生まれ　同じ頃に同じ場所に学んでいたことで少し親近感が湧きます

注目したのは　大東亜会議と重光葵（まもる）の動きです

重光については　ミズーリ号甲板での降伏文書調印や　吉田茂との首相争いに負けた経緯などを想い出します

一貫して対ソ強硬派であった重光の自伝「昭和の動乱」は巣鴨プリズンに収監されていた最中に　裁判での自己弁護資料として書き上げたものを後に輔弼しているようです　多少自己弁護的に感じるところもありましたが　今回もう一度読み直してみたくなりました

本編で　波多野氏は重光が東條の戦争指導に対抗し　もしくは東條の施策を逆手に取り　戦争終結への道を模索していたことを知りました

軍が主導権を握っている限り　軍は戦争目的を勝手に書き換え戦争拡大・侵略を続ける　政治が主導権を取り戻さない限り戦勝終結は成り立たない　

自存自衛の戦として始めた大東亜戦争　軍が掲げた大東亜戦争の目的を　国際社会の新しい潮流である　民族自決　国際協調路線に近づけるべく　大東亜共同宣言を全面に打ち出すことにより　侵略戦争であることを否定し　戦後の国際社会の中での共存共栄を図ろうとする重光の国家戦略は　私にはとても賛同する処を感じます

外交官としての重光の高い理想は　混迷の現代にあって　もっと高く評価すべきであろうと感じました