羊の歌 加藤周一

友人が　神田神保町すずらん通り　の　共同書店（ひと棚ごとに店主が居る）に出店しています

https://passage.allreviews.jp/

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ご挨拶を兼ねて　訪問し　買い求めてきたのが此の本

彼は　私の二年後の入社　技術者教育を長く勤めあげた男です

読書家とは認識していたのですが　私とは全く分野が重なりません

従って　目に留まったのはこの本だけ　実は　私は加藤周一は　初見です

私の学生時代は　政治闘争で荒れた時代でした　そんな時代を冷ややかに見詰める評論家として　人気のあったのが加藤周一でした

「芥川龍之介の文章に　真実と云われるものには裏があり　決して一つではないことを知らされる」という文章が　眼に留まりました

私の若きに日は　自分が目で見たことしか信じない小田誠のような視点もありました　私もどちらかと云えば　書かれたものには嘘がないと

思い込み　作者の意図を慮る視点は欠けていたように感じます

彼は　埼玉の豪農の孫　父親は医者　府立一中　一年飛び級で旧制第一高校（駒場）　東京大学医学部卒業という　日本社会の頂点１％の中で生き続けた男　驚異的な知力学力を備えた　所謂日本のインテリゲンチャのひとりであります　

私の育った青山師範という学校も　此の本の中に出て来ますが　私は　この１％の世界から落ちこぼれた人間であり　この世界に嫌悪感を抱き続けた人生でした　それだけに　此の本を読み続けるのは大変苦痛でした

他の人の及ばぬ努力をしているのでしょうが　豊かな生活を享受して人生を終えています

彼の文章は　知識のひけらかしのようなところがあり　とても読み辛く感じます

ニュージーランドという国がありますが　彼は「ニュー・ジーランド」と　表記しています

確かに　新しいジーランド　ニューヨークとと同じですが　「ニュー・ヨーク」と表記する人は居ませんよね

「もとより私のフランス語の語彙は　はるかに日本語の語彙に及ばなかったが　私が日本語で覚えるよりも先にフランス語で覚えるものの名前も　次第にその数を増してゆこうとしていた」（続P１３９）

「彼らが間違っているということを客観的に説明できない限り　彼らの言い分はすべて正しい　と私はその時に思った　傍観者としての判断は　常に可能ではない　故に傍観者であるのをやめるときがなければならない」（続Ｐ１７４）

語っていることは　すべて正しい　しかしながら　読み続けるには大きな苦痛が伴う　そんな読後感を持ちました