金の足掻き 日雇い浪人生活録十四 上田秀人

日雇い浪人シリーズも十四巻目　過去の例からして　そろそろ終局を迎えるのか

近年　田沼意次の経済政策が評価されつつあります　田沼と云えば賄賂と連想してしまいますが　当時の社会では日常茶飯事　彼の悪評は

松平定信が意識的に流したものかもしれません

上田秀人は　世の中の仕組みを判り易く解説して呉れます　今回のテーマは貨幣経済　その必然性を教えて呉れます

今回挿入されたエピソードに徳川御三家の話が出てきます（P74）

家康は　宗家に後継者が絶えた時のために　尾張（九男義直）　紀州（十男頼宣）　水戸（十一男頼房）に譜代旗本から家臣を分け与え立藩させます

家康の晩年に生まれた三人を立てた処に注目し九男以降を産ませた家康は替え玉だったのではとの説も囁かれます

上田は「本家に後継ぎが無きとき　その血を返せ」と家康は遺言し　御三家から将軍が出た時　封も家臣も城も幕府に返却しろとの意味が込められていたと説明しています（上田の創出で史実ではなさそう）

確かに御三家に移された家臣たちは　直臣から陪臣に身分を落とされ直臣に戻りたいとの強い不満を持ったと想像出来ます

しかし　御三家は後継者が絶えた時のために「御連枝」と称される支藩（分家）を設けています

尾張家御連枝の高須松平家は4代、紀伊家御連枝の西条松平家は3代、水戸家御連枝の高松松平家は2代の御三家当主を出した。たとえば、紀伊家当主だった吉宗が8代将軍に就任した際、西条松平家から頼致（徳川宗直と改名）が紀伊家に入り当主を継いでいる。幕末の尾張家当主慶勝も高須松平家から養子に入っている。

高須松平家の末裔が幕末に　会津を継ぐ容保　尾張を継ぐ義勝　等の高須四兄弟です

ストーリーよりも　挿入されたエピソードに面白みを感じる作品です