此の本は 若き日に一読したことを覚えています

池田首相の秘書官だった伊藤昌哉の傑作と云われていますが

現在保坂正康が文藝春秋に連載中の「日本の地下水脈」の中に 此の本は伊藤昌哉が書いたものではなく 保坂が70時間の面談取材で代筆したものと告白しています
半藤一利の処女作「日本の一番長い日」は 若き半藤がリーダーとなって書き上げたものですが 初版は松本清張の名を借りて出されました
半藤も 保坂も 若き日には自信の名前では 出しても売れないことを知っていたのでしょうか
改めて読み直し 自民党の権力闘争の激しさを再認識しました
誇張もあるのでしょう 伊藤昌哉は 岡山の金光教の熱心な信者 大平正芳は敬虔なクリスチャン 大平が伊藤から異教の神のお告げを神妙に聴く話が何度も登場します
一番の悪者として描かれているのが福田赳夫 財務省出身の超エリートではありますが 権力への執着 策謀に明け暮れ 言質はコロコロと入れ替わる様は 国政の頂点に立つ人物とはとても思えません
大平は 本来は 内気なはにかみ屋と伊藤に評されて居り 我々がマスコミを通じて知る大平とは全く別人のような優柔不断さが描かれます
伊藤の立場は 一時期宏池会の事務局長でしかありませんが 大平と福田の橋渡し役として描かれたり 福田に政治日程案や 組閣案を提示するなど 軍師・闇将軍のように立ち回ります 政治の実態は寧ろ此の本に描かれた通りなのだろうと思うと背筋が寒くなります