日本国憲法の２００日 半藤一利

半藤一利氏の戦争体験から　日本国憲法成立への過程を纏めた名著です

半藤氏の人柄と感情が　其の侭綴られ　彼の目線の確かさを感じられる一冊です新たな発見もありました終戦後　近衛前首相が東久邇内閣に副総理格で入閣し　ＧＨＱにマッカーサーを訪問　大日本帝国憲法の改定を委ねられるという珍事件が起きていますその引き金となったのが　近衛に通訳として随行した終戦連絡中央事務局第五部長　奥村勝三近衛はマッカーサーに「政府の構成に付いて何か意見があるか」と問う　奥村は　「構成」を「constitution」と訳すマッカーサーは「Constitution」（憲法）と聞き「Consutitution change（憲法改正）はお説の通り必要だ」と答える近衛は更に誤解し　近衛が新しい基本法の草案を作り　民主主義に乗っ取った政党を結成　此れが指導にあたるべきであると理解した勿論マッカーサーにはそのような意図はなかったが　自分がその委任を受けた印象を持って席を立った即ち　通訳奥村の誤訳が事件を起こしたのである奥村勝三には　前科がある　米国への開戦通告事件である　在米日本大使館に暗号電文で送られた通告分を　大使館員たちは送別会で痛飲し翌日遅れて出勤　１２：５０までに米国国務省に手交するよう指示が出ていたにもかかわらず　暗号電文の翻訳に手間取り　タイピストが出勤していなかったため　タイプが苦手な奥村が自らタイピングし　手交が大幅に遅れてしまう　１３：００にはハワイ攻撃は開始され　通告文が手交されたのは１４：２０であった即ち　奥村は前科二犯ということになる